ある日、24〜5歳ほどの女性が目だけの見えるマスクを被って漢医院に現われました。季節は春だったので、そのマスクが寒さを防ぐためのものだとは考え難かったのですが、少しためらいながらマスクを脱いだ女性の顔を見た私は驚かずにはいられませんでした。診察をするためによく見ると、目の周りを除く顔面全体がニキビに覆われていました。しかもただのニキビではなく、黒ずんで分厚くなった瘡蓋(かさぶた)が女性の顔一面を覆っているようでした。
Q
: 今にも泣き出しそうなその女性をなぐさめるようにしながら診察をしていると、『先生!私は16歳頃にでき始めたにきびがだんだんひどくなって薬局や皮膚科、肌専門エステを転々とするのに既に8年以上も経ってしまいました。今となってはにきびが問題なのではなくて、その間に続けて服用していた強い薬や精神的なストレスのせいで胃腸機能に支障が出てきて、体全身が衰弱するだけでなく、神経障害まで伴うようになってしまいました。これからはにきびはどうであれ、消化機能と虚弱した体を治療したくて訪ねて来た』ということでした。
A
: この女性を診察した中で最も著しく身体に現れていた症状は生理不純でした。1年にたったの3〜4回しか生理がなく、生理があったときでさえもひどい腹痛や腰痛、精神不安定などの症状が現われるとのことでした。さらには頭痛や目眩、胸焼け、消化不良、膀胱炎、ひどい便秘などの症状まで重なり苦痛で生きた心地がしなかったそうです。
Q
: これほどまでひどいにきびでも漢方による治療は可能なのでしょうか?
A
: この患者のにきびは生理機能不全による生理不純によるものだと判断し、生理不純治療剤の中で'桂枝茯苓丸'、胃腸と肝臓の機能を助けて精神神経機能まで改善させてくれる'柴胡桂枝湯加小回香牡励粉'水分代謝を調節する'呉苓散'を処方し2週間分を投与しました。
Q
: 治療の経過はどうでしたか?
A
: 3週間後に訪問した患者はとても顔色が良くなっていました。胃腸機能と神経性膀胱炎の症状がとても好転し、精神的にもかなり回復した様子でした。また、にきびも多少症状が治まったようでした。'桂枝茯苓丸'を中心に女性の生理機能に活力を与える'温経湯'を加味して1ケ月分を投与しました。さらに1ケ月後に会った患者は半分以上もにきびが良くなっただけでなく、生理の時の苦痛がかなり軽くなったと満足げな表情を浮かべていました。さらにその2ケ月後にはにきびが殆ど治まっていて、生理機能と体の機能もとても良好になっていました。
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詳しい内容は'簡単に治らない痼疾病'を参考にしてください。